結局のところ [読書]
読書が楽しくなってきたところで、こんな習慣を継続すべく次に手に取ったのが・・・
これはとても読みやすい本でした。
昔人種差別がまだあったころの、南部アメリカでのお話で、三人の登場人物のモノローグを交互に続けるという形で話は進んでいきます。その登場人物は二人の黒人のメイドさんと一人の白人のまあまあ裕福な家庭の娘。
この白人の女性はこのころのある程度裕福な家庭の子女にはありがちなことですが、黒人のメイドさんに育てられ、自分の母親が厳格でどちらかというと短所ばかり指摘するような性格だったのに対して、情の深いメイドさんからの愛情をたくさん受け、人を信頼すること、自分に自信を持つことを教わって大きくなったと言う女性。なので、この本に登場する白人女性の中では珍しく、メイドに対して人間として接し、会話も交わしたりしていたのですが・・・。
当時の様子、ある意味黒人の(というより有色人種に対する差別だったので、日本人ももしその場にいたら差別される側になっていたはず)苦しい立場、白人の横暴ぶりは思った通りだったのですが、一方で主人公以外にもメイドに対して人間として接して思いやりを持ち、まわりの白人からもしかしたら非難されるかもしれないことでも自分の信念でやっていた人たちもいたんですよね。こういう集団心理のような中で、自分で考え、自分で判断して行動することができる人がいるとうれしくなります。
白人の彼女はあることを企画し、世の中ではタブーとされていたことを、二人のメイドの協力を経て成し遂げます。
文章はとてもよみやすく、リズムがあるのでどんどん読み進むことができます。The Art of Racing in the sunよりも読みやすいかも。
でも・・・・・。
最後の幕切れは、意外すぎるものでした。(以下ちょっとネタばれあり)
やっぱり結局彼女は二人の好意を利用していたと言われても仕方がない。彼女は決して黒人のためにとか、社会を変えようとかそういう意図を持ってやっていたわけじゃなかったんでしょうね。自分が物書きとして世に出たかった。それが彼女の動機だったのかも、とおもうと後味はあまりよくないです。
でも・・・・なんとなく、社会ってそういうものかもしれないな、という気はします。なのでかえって「めでたしめでたし」ではなかったのがいろいろ考えさせられて(あと現実を知ると言う意味でも)よかったのかもしれません。とても読みごたえのある本でした。
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